堀古蝶(こちょう)、本名健三
大正10年愛知県に生まれる。名古屋高商、ついで神戸大学卒業
昭和23年(1948)中部日本新聞社に入社
昭和34年(1959一1963)モスクワ特派員(第一回)
昭和42年(1963一1969)モスクワ特派員(第二回)
昭和46年(1971)「風」に入会
昭和47年(1972)昭和58年まで11年間東京新聞のコラム「筆洗」欄担当
昭和50年(1973)より「風」同人
昭和56年(1981)「風賞」受賞
昭和59年(1984)「春耕」同人参加
平成5年(1993)『俳人松瀬青々』により俳人協会評論賞受賞。
主観による写生俳句を説いた。ロシアの政治家、大統領のフルシチョフの名に因み「古蝶」と自称するようになっていた。
《主な著書》『細見綾子聞き書き』『主観俳句の系譜』『俳人松瀬青々』『筆洗歳時記』。俳人協会自註句集『堀古蝶集』。句集『白い花』『烏瓜花』『爲樂(いらく)』
平成9年10月6日死去、享年76歳。国分寺市恋ヶ窪の東福寺で葬儀。
作品より
悴みて目玉ばかりの俘虜となる
墓掘ると凍土の上に大焚火
街角より大きな乳房晩夏光
あめんぼう走る原爆の日もかくや
夢の中俘虜に戻りて年の暮
蛇皮線を担いで踊る良夜かな
密会や雪よペチカの屋根に降れ
方丈に月出て烏瓜の花
金縁眼鏡して手をついて青蛙
麦の禾の強きロシアを思ひをり
松葉踏めば軍靴の音となりにけり
笛さみし笙は甘しや管絃祭
遠ざかるヴォルガ舟唄花の雨
白菖蒲一弁風に立ちあがる
倶利伽羅を犇めきのぼる赤とんぼ
白粉花の紅の沈みて夕ながし
春の鴨しぶきを上げて睦みけり
流灯の崩るる帯の美しき
雪渓を雲脚走る湯殿山
金色の梅雨の新月濡れてをり