朱鷺色の浮雲に乗る夢始め
手捻りの碗のゆがみも淑気かな
淑気満つ遠海鳴りの国上山
銅鑼打ちて昂ぶる鬼の追儺舞
翼船の水尾にはじける春夕日
新茶汲む父の遺愛の青九谷
弥彦嶺に闇迫りゐる袋掛
薫風や高原駅の丸太椅子
宙を切る足裏涼しき越後獅子
秋暑し押し合ふ牛の土煙
小鳥来る林の奥の無言館
木の実落つ葉擦れの音をひきながら
小春日の匂ふ良寛いろはの碑
塩引を作りし夜の内臓汁
朱鷺降りる冬田の水のかがやきに