寂しさへこの橋渡れ雪解靄 散る際の放心にあるさくらかな 散るさくら仏は千の手をひらく たんぽぽの絮の球体こそ平和 油絵の油の匂ふ薄暑かな 植ゑし田をしろがねの風走るなり 灯を消して草田男忌あす原爆忌 雁渡る水の鋭き越の国 …
一湾の人のまばらや夏惜しむ 青木晴子
堰落つる水のきらめき川床開 青木洛斗
残雪の月山凜乎空の青 青山悦子
初時雨神代杉の洞深し 秋山淳一
朝鵙のこゑの透きくる山晴忌 朝妻力
島々にかかる大橋星月夜 青柳園子
一つ葉に一つの支点芋の露 浅野文男
蟬しぐれ秘仏開扉の立石寺 阿部月山子
角巻に潮の香包む行商女 阿部美和子
鳴き砂の戻りし浜や朝曇 天野和風
闘病の友と仰ぎし初御空 網倉階子