柚口満
高千穂夜神楽
刈干しの大束神の空に投ぐ
冬日和山のあなたの神を訪ふ
冬霧の晴れて天孫降臨地
高千穂嶺の影の延び来る冬田打
高天原ぬつと現る零余子採り
冬晴れや天真名井の湧く音す
段畑の夕日のなかを道神楽
神楽笛高嶺は星を増やしつつ
生れたての牛の息づく神楽宿
刈干切り終へて一夜の神となる
夜神楽の楽屋に盛らる握り飯
皸の女神の御手天を指す
夜神楽の太鼓高鳴り岩戸開く
夜神楽の岩戸の板を力づく
強霜や幕間に廻す煮しめ皿
熱燗に天細女も酔ひ賜ふ
夜神楽の伊邪那美客と戯るる
神楽宿尿の湯気濃き外厠
夜神楽の果てて厩の匂ひ濃し
神の面社に戻り初雪来