池野よしえ
裏薮に懸巣の騒ぐ蓮華峰寺
いろつやの失せし種茄子地に座る
たまさかの貰ひ日和や大根引く
冬ざれや枕木に伏すたらひ舟
大白鳥真綿のごとく田に散れる
海苔採りの万畳敷へ波しぶき
料峭や女ばかりの文弥の荷
如月の満月観むと鍵を解く
吹き流し立つ海苔摘みの口開け日
雪吊りを解かれし縄の地に乱る
囀りへ戸を繰る音の能舞台
引く白鳥佐渡に一と日を過しをり
般若経あげつつ女毛虫焼き
一騒ぎして葭切の移りけり
ゆつたりと澱みより出る鯰の子
八朔を灯し初めの盆灯籠
浦人へ盆の供物を託しをり
金北山に片雲かかる大根播く
申し訳ほどに稲架結ひ勢子に出る
勝牛の舌が巻き取る花芒