大磯どんど焼き   沖山志朴

こゆるぎの空に浮かべり雪の富士
火入れ待つ空突く丈の浜どんど
恵方よりさきがけの火の上がりたり
どんど火に動き出したる湾の闇
つぎつぎとどんど九基の燃え上がる
もつれ合ふほむらの先に冬の星
浜太鼓打ちてどんどの火を煽る
天地を浄むる音にどんど燃ゆ
燃え盛るどんどに染まる波の色
どんど火へ福受くる身をひるがへす
燃えながら夜空に舞へる吉書かな
福達磨燃えつつころげ落ちにけり
崩れゆくどんどに澄みし鈴の音
男らのふどしで駆くる冬渚
荒海に綱で引き合ふどんど神
藤村の愛せしどんど今盛る
風向きに崩れだしたりどんどの輪
倒れては人群散らすどんど竹
波音をそびらに焙るどんど餅
どんど果て星星戻る相模湾

沖山志朴→その人