祇園祭    吉村征子

鉾町の階より洩るる稽古笛
鉾立の次第つぶさに見て飽きず
鉾立や千尋の縄を使ひ切り
試し曳きてふも祇園会さながらに
提灯の灯るに間あり心太
洛中に路地や小路や掛簾
冷奴ひさぐ若冲生家跡
宝前に立花匂へる安居寺
夏の灯に延べたる祇園祭礼図
地下道を出れば鉾町こんちきちん
担がれてけふは神の子鉾の稚児
長刀鉾胴震ひして発ちにけり
辻廻しに祇園囃子のいよよ急
胴掛に鉦の緒撥ぬる日の盛
塩飴を添へて振舞ふ氷水
長刀鉾軋みつ揺れつ進みけり
御旅所にいやちこの護符賜りぬ
檜扇を活け大棚の店構へ
巡行の果てたる余韻祭鱧
水打つて仕舞屋の路地夕づきぬ

吉村征子→その人と作品

 

 

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