闘病の友と仰ぎし初御空
父となる日の子の便り春の夕
懐妊の娘と虹仰ぐ夕べかな
座す磐の遡るごと夕河鹿
終戦忌象に飼葉の豊かなり
石手寺へ子規試歩の道秋遍路
入日さす湖に色なき風渡る
枯真菰水際へ鷺の忍び足
窓の灯のこぼるる庭や秋の声
柊の香りの中に咲きこぼる
かざす掌の餌へ交互に春の鳥
友癒えて温泉に来し八十八夜かな
雨しづく光る草叢ぎすの声
叡山の遠き燈や年の宿
立春大吉仔象の牙の生え初むる