春の鹿耳うごかして風さぐる
青柳の風の添ひゆく海鼠壁
風光るみささぎの空朱鷺の舞ふ
巫女舞ひて万葉の風神無月
うず潮の音聞く岬山桜
一粒の命の残る蜆籠
水馬生の証に輪を描く
万緑に埋もれし沢の水掬ふ
漁火の遠く連なる終戦日
ふるさとは新盆の灯の多き年
登高や水軍の島静かなる
宿坊の板の冷えくる秋遍路
菜殻火の火の鳥のごと天へ舞ふ
鰤起し祖院の甍光りけり
雪像の輓馬細りて昼の雨