濃く淡く雨にけぶらふ桜かな
解散の言問橋に春惜しむ
山にゐて海を見てゐる夏帽子
意のままに伸びて風呼ぶ凌霄花
村落はダム湖の底や赤とんぼ
名画座の余韻引き摺る秋時雨
文楽の情話身に入む齢かな
道化師の去ればしばしの秋思かな
耳搔きの小鈴の音や冬麗
荒海を真向ひに据ゑ山眠る
言の葉の途切れしあとはみかん剝く
極月や夜の交番人絶えず
神棚にいつの御札か煤払
冬暮光浜の食堂早仕舞ひ
白子干す漁師の妻に日の豊か