日だまりに糸ほどの風節分草
白魚の透けたるままに影もてり
連翹の朝の光に沸騰す
塩踏めば足に力や火を渡る
ここからは保育所といふ花の寺
川底を朝日ころがる立夏かな
美しき手に潰さるる藪蚊かな
噺家のさらりと脱いで夏羽織
蛇口から水飲む少年薬の日
炎天の若き工夫や耳飾り
お手網に触れて涼しき一日かな
校門を出て校長のサングラス
秋蝶の止まりなほして同じ向き
発車まで毟るズボンのゐのこづち
コスモスの果てまで風のゆきわたる
柿谷妙子かきたにたえこ
柿谷妙子かきたにたえこ
◆略歴 平成 17 年「カリヨン」入会。平成 21 年カリヨン昴賞受賞。平成 22 年「カリヨン」同人。平成 25 年「春耕」入会。平成 26 年「春耕」同人。春耕新人賞受賞。 俳人協会会員。