初松籟磯宮の鈴鳴り通し
松過ぎて晴着をぬぎて漁婦の顔
歩み板きしむ四温の船溜り
捨船に恋に破れし猫の鳴く
春立つや沖のさざ波ふくれくる
雑魚を干す竿の高さや春うらら
そのかみの椀船の浦春うらら
青葉潮浮玉のせてふくれ来る
老いて尚春愁のあり波の音
紫陽花に毬の大小ありにけり
合歓咲いて峠に残る水呑場
一握の砂さらさらと涼新た
重陽のお食初めとて箸飾る
薄氷にこつんと杖を当ててみる
糶はねて雑魚こぼれゐる余寒かな