浅春の磯風に散る海女の声
薄氷歩幅違へて踏みゆけり
雪形の猿に急かされ鍬浸す
鬼太鼓の遠音春田を渡り来る
薫風を孕む暖簾の葵紋
身代りの地蔵浄める走り梅雨
夜干梅闇に香りの漂へり
一管の闇裂く島の薪能
夕焼濃し岩に釣師の身じろがず
葛原を揺さぶる風の海へ去る
車田に穭の影の弧を描く
水張つて朱鷺の餌場となる刈田
朝靄へエンジン吹かす牡蠣漁師
潮の香の椀に漲る寒の海苔
夕映えの野の雪散らし朱鷺翔てり
本間ヱミ子ほんまえみこ
本間ヱミ子ほんまえみこ
◆略歴 平成12年「春耕」入会。平成18年「あきつ」入会。平成21年「春耕」「あきつ」同人。平成24年俳人協会会員。