ふたかみの山懐の野老掘る
年惜しむ神名備の鈴鳴らしつつ
冬麗の神名備へ注連担ぎ上ぐ
南無観と唱へつ奈良に年惜しむ
三山の女山に移る冬日かな
山茶花の茶粥待つ間を散り急ぐ
冬麗のこの山もまた歌枕
寒禽のひとつは八咫の鴉かと
冬耕が古墳の裾をまた削る
煤逃の突き当りたる陰の石
股引の身をひきずつて深吉野へ
吉野より持ち帰りたる水つ洟
三山の見ゆる窓拭く年用意
一言神までの曲折冬の畦
葛城の風の中なる松迎