くわんをんにほのくらがりといふ淑気
国栖奏や天皇淵の翡翠色
水際の張り詰めてをり葦の角
いちにちをにこにこ過ごし万愚節
妖精の昇る階段ねぢり花
常磐線の筍飯の匂ひかな
象が飛び鯨が飛べる夏の空
川渡る度川を見る帰省かな
算盤で商ふ母や水を打つ
はらからは妹一人衣被
夕ぐれの風の重さの酔芙蓉
鬼の子の貌をかしうてかなしうて
穴太積みの石の隙より秋のこゑ
魯迅もまた筆名の一つ冬昴
煮る豆の匂ひの中の去年今年