福詣谷中の路地を幾曲り
漁火のまたたく闇へ豆を打つ
まんさくや鳥影よりも淡き影
日輪のたゆたふ水面仏生会
父の日の父と書肆にて待ち合はす
ががんぼの鏡打ちをり夜の豪雨
闇深く蟇鳴く声や坊泊り
浜へ寄す破船の木端晩夏光
鰯雲沖へ出てより広がりぬ
赤蜻蛉落柿舎の土間通り抜け
遠きほど雲の明るし葦の花
鳰の浮くまでの水面の照り翳り
一葉の通ひし質屋雪しづる
去年今年鎮もりてゐる塒の木
雪折の音のひびくや永平寺
藤武由美子ふじたけゆみこ
藤武由美子ふじたけゆみこ
◆略歴 昭和19年福岡県北九州市生まれ。平成元年春耕石神井句会に入会。皆川盤水に師事。平成7年「春耕」同人。俳人協会会員。 令和4年4月5日死去享年78歳