福詣谷中の路地を幾曲り
漁火のまたたく闇へ豆を打つ
まんさくや鳥影よりも淡き影
日輪のたゆたふ水面仏生会
父の日の父と書肆にて待ち合はす
ががんぼの鏡打ちをり夜の豪雨
闇深く蟇鳴く声や坊泊り
浜へ寄す破船の木端晩夏光
鰯雲沖へ出てより広がりぬ
赤蜻蛉落柿舎の土間通り抜け
遠きほど雲の明るし葦の花
鳰の浮くまでの水面の照り翳り
一葉の通ひし質屋雪しづる
去年今年鎮もりてゐる塒の木
雪折の音のひびくや永平寺