柴の戸に待春の鳥いくたびも
安心といふさながらに落椿
鳥引くや入江は常の景ならず
紫は千年のいろ花菖蒲
ゆふぞらのいろづきやすしねぶのはな
ラムネ玉ちりんと鳴つて恐山
東京をびしよ濡れにして桜桃忌
先頭のしんがりとなる稲雀
山晴忌「ぼるが」は夕の火を熾す
秋の声久女の墓のうしろより
頑なにいつもの場所に竜の玉
漉き上げて天地返しに紙を置く
十二月八日の雲が鴉吐く
冬菊の黄を絞りだす力かな
風花はことば一片づつ光り
蟇目良雨ひきめりょうう
蟇目良雨ひきめりょうう
◆略歴 昭和17年埼玉生れ。昭和57年高木良多に師事。「風」「春耕」入会。61年春耕同人。昭和63年「春耕賞」。春耕編集長、俳人協会監事、「東京ふうが」主宰。「塔の会」会員。句集『駿河台』『神楽坂』。著書『平成食の歳時記』『良雨一日一句』(平成21年~25年)5巻。平成29年句集『菊坂だより』。令和3年「春耕」主宰継承。→出版物案内