きさらぎの大和の闇の深さかな
天平の世もかくあらむ蓬萌ゆ
瑞垣の出入りせはしき恋雀
祭足袋こはぜとばしてもどりけり
頰づゑの太宰をしのぶ走り梅雨
まだ空の深さを知らず巣立ち鳥
はんざきや霊山の水豊かなり
炎天をきて護摩の火へかしこまる
いつさいの音を呑みこむ夕立かな
生身魂一門へ檄とばしけり
髪冷ゆるまで立ち尽くす星月夜
埋み火の色を引き出す火箸かな
大鱈の写楽のやうな面構へ
能衣装かかる工房機始
手にふるるもの皆硬し寒の入