茂吉忌の遠き雪崩をききにけり
雉子打の尾を引きずりて帰りけり
花冷を灯して銀の錺職
足折りて眠る仔牛や茄子の花
豆稲架の下を野鼠走りけり
雪霏々と杉山深き貴船道
ほととぎす羽黒の塔へ声つくす
子規虚子の生れし地に来て秋惜しむ
踏み減りし鞍馬寺の磴春の雨
鷹鳩と化し鵯に追はれけり
陛下の道桜の少しもみづれり
大繭玉密なる影のめでたけれ
炉開きや十能の熾美しき
影一つなきまま密にヒヤシンス
コスモスの色を次々風さらふ