林檎咲き明るくなりし麓村
遅桜城の中より津軽三味
三面鏡大きく開けて夏を待つ
海猫の群れ乗せてふくらむ夏の潮
夏菊の海へなだるる竜飛岬
草々の匂ひ濃くなり山瀬来る
酒樽を積んで出を待つねぶた舟
ねぶた果て岩木山に星と月戻る
烏賊干してみちのく長き冬に入る
一村の音の失せたる猛吹雪
みちのくに生まれて雪を怖れけり
古里の雪載せて着く寝台車
門前に津軽なまりの暦売り
あまめはぎ去りたるあとの藁匂ふ
太宰碑へ尽きる磯道恵方とす
升本榮子ますもとえいこ
升本榮子ますもとえいこ
◆略歴 昭和55年頃より夫・行洋の指導を経て、昭和60年「春耕」入会。皆川盤水に師事。昭和62年「春耕」同人,評議員。俳人協会会員。句集『ねぶた笛』