手短な御慶でありぬ共に生き
家中がのた打ち回る福笑
亀鳴くも鳴かぬも妻とふたりかな
弟が逝つてしまひぬ春立つ日
蛤になれぬ雀の田といふ海
だしぬけに波の綺羅より海女の笛
法名に海の一文字夏来る
点滴に繋がれてゐて夏に入る
リハビリの試歩に寄り添ふ日傘かな
天皇の長靴召さる田植かな
簗守を寝かせぬ雨となりにけり
地下鉄を出で名月の家路かな
着膨れて東京ディズニーランド行
炭足してひととき暗くなりにけり
遠吠えが遠吠えを呼ぶ霜夜かな
松川洋酔まつかわようすい
松川洋酔まつかわようすい
◆略歴 昭和18年東京生まれ。平成5年「春耕」市ヶ谷句会入会。棚山波朗に、また平成8年より皆川盤水に師事。平成14年「春耕」同人。平成20年社団法人俳人協会会員。平成22年句集『家路』出版。平成23年「銀漢」同人。