谷間の淡き日差しや藁盒子
こもりくの御寺を春の暴れ鬼
ひねもすを筆に遊びて上巳かな
水のこゑ木のこゑ東風の鍛冶の宮
合歓咲くや納戸にグリム童話集
夏霧の底ひに五百羅漢かな
忘れ井や腐草蛍となる夕べ
神将の怒気や殺気や処暑の風
琵琶の音や梶の葉浮ぶ角盥
浮雲やくぬがの道の草の絮
魚群れて向きをひとつに水の秋
綿々と磐余のあばれ亥の子かな
牡蠣打に寄りては退るひもす鳥
乾坤の闇の深きを木菟のこゑ
炉を囲みをり而してまむし酒