遠ざかるほどに初富士濃かりけり
二つ目は水の音めく春の雷
サッカーのボール蹴りくる雛の客
桜餅問はず語りに子規の恋
初蛍舞ひ上るとも吹かるとも
竜宮城付けて亀の子売られをり
夏座敷軸をはみ出す筆力
蟇残して家を明け渡す
嫁がせて秋の扇を使ひけり
初鴨のしぶきの上の近江富士
近江米旨しいづくも雁の空
石笛の円かにわたる良夜かな
宵闇の御苑つらぬく能の笛
河豚食ふて毘沙門天の闇親し
水鏡して裸木の華やげり
沢ふみ江さわふみえ
沢ふみ江さわふみえ
◆略歴 平成2年「畦」入会、上田五千石に師事。平成7年「春耕」入会、皆川盤水に師事。のち棚山波朗に師事。平成18年句集『桜橋』。平成29年句集『雀色どき』。