大木あきら

大木あきら

豊橋出身

東京新聞文芸部長を歴任

「百花」(東京新聞社内句会)同人、「春耕」同人

「連想論」を説いた
平成13年10月18日没、享年七十三歳

作品より

母の忌の春蘭匂ふ通し土間
杉玉を吊る連子窓秋近し
彼岸会の鐘応へ合ふ由比ヶ浜
象潟の色を自在に夕つばめ
戦国の城の真下の鵜飼舟
避寒宿予約してゐる長電話
開かれしままの本堂春暖炉
風呂吹の湯気の向うに母ありき
緑濃き阿波の酸橘のよく匂ふ
曲り屋にいびきかく馬十三夜
海鳴りのひびく岬寺寒椿
哲学の道のあとさき夕蛍
風鈴の雨呼ぶ者となりにけり
耳遠き父に小綬鶏声を張る
うなり来る幻住庵の藪蚊かな
暮れなづむ七里ヶ浜に春の星
検査終へ戻る病棟梅雨夕焼

今年竹古墳を抽んでてそよぐ
石臼の目を立てる父冬ぬくし
歳晩の空をゆつくり観覧車
草萌ゆるローマの丘の遺跡かな
灯の暗き甘酒茶屋の春暖炉
大使館夜会の庭の蚊遣香
台風来病棟鉄扉閉ざしたる
銀やんま追ひかける子の捕虫網