雛菓子の包みに正倉院文様
鯛釣草ゆたけき竿の撓みかな
大川へ声明さやに出開帳
北溟に刺さる一閃春の雷
雀の子翅あるものを捕り逃がす
初蝶の枝縫ふやうに這ふやうに
白秋を歌つて了る舟遊び
秋の日は山より暮れて和紙の里
退院の母へ障子を貼り替へる
十三夜貝の指輪の欠け易し
蒼天へ噴きあげパンパスグラスかな
凩のちりちり飛ばす日のかけら
近江富士あたり晴れゐる片しぐれ
咲き満ちて空の淋しき冬ざくら
大締めの声生きいきと夜番果つ