一月の村に居座る山の影
どんど果て波押して来る深き闇
生徒飼ふ兎汚れて二月来る
三月や水いきいきと堰越ゆる
空つぽの鳥かご軒に四月尽
山からの風に水の香五月来る
風と来て風に飛び立つ川とんぼ
沖の帆に心の通ふ暑さかな
焼夷弾逃れし川の草いきれ
我が影の大地に歪む炎暑かな
八月の星近くなる岬かな
雑草の丈極まつて九月来る
芒野に風の棲みつく夕べかな
稜線の空に際立つ十一月
崩落の山肌乾く十二月