料峭や水挿し上げて鯉はねる
猫柳水辺の光集めをり
平凡に生きる幸せチューリップ
土塊の解るる匂ひ節の忌
はじまりはどこか分からぬ蜷の道
誰も来ぬ畑の日だまりいぬふぐり
顔知らぬ母の忌日や濃紫陽花
晴れて行く風に卯の花こぼれけり
紫陽花の明日へと続く今日の色
風あれば風に寄り添ひ綾子の忌
野葡萄の色増す山の日ざしかな
ばら園のばらに包まれゐて秋思
根上りの松の根に満つ秋気かな
暮れてより影の際立つ秋の富士
春耕の日を鋤き込みし匂ひかな