紅梅のほつほつ母の忌の近し
母の忌を修する墓所に笹子鳴く
ものの芽のまだ影もたず犇めける
節分草乾びし山の風の中
井戸水を使ふ暮しや朝ざくら
竹林の奥に水音河鹿笛
若竹のはや風を生む厨窓
籐椅子に父のおもかげ夕しじま
天地の静けさあつめ梅雨の月
植ゑし田の玉苗のはや風捉ふ
そこらまで友を見送る十三夜
終りとも初めとも見ゆ冬ざくら
部屋に灯を点せば冬の来てゐたる
単線の音響かせて山眠る
汲み置きの水の動かぬ寒さかな