武田禪次
茸売り朽葉の匂ひまとひをり
ラマダンの夜の更けゆく秋灯
黄落の空へ羽音の禽の群
寒月や東寺の塔を尖らせる
楪の芽の円かなる元三忌
大和かな古墳を囲む荒鋤田
浮舟の小さき碑花樒
水牛のねまる番小屋豆の花
つちふるや日の量大き天安門
水草生ひ流れに遅速生まれけり
ガンジスの果より湧けりつばくらめ
鳥交る釈迦牟尼の地の森深し
雪代の岩魚鋭く歯を剥けり
長江の卯波けたてて進水す
やはらかな風の吉備路や袋掛
未草閉ぢて夕影いざなへり
牛蛙沼の底より鳴きにけり
荘園の礼拝堂へ稲びかり
山毛欅林をぬけくる水や男郎花
砂漠てふ地平線より秋の鷹