秋冷を抱く大門潜りけり
秋雲の一朶九度山とらへたり
結界の苔にきはまる秋の色
唐門に桜紅葉の妍競(普賢院)
宿坊の厠へ渡る夜寒かな
しはぶきの一つこぼれて朝勤行
摩尼車からからからと秋の声
露の世へ丈六仏の与願印
初しぐれ奥之院より燭明り
奥津城をつつむ秋霖秘境めく
奉る一灯もまた秋の灯に
残る虫依代とする無縁塚
主従いま浄土の句座か菊日和(藤堂蟬吟墓所)
行く秋や慈顔かをらす仏たち
大伽藍迦陵頻伽の来る小春