杉阪大和
鴨帰る
曳売に竹の節ほど日脚伸ぶ
飯粒に鯉の寄り来る春隣
節分の鬼の言ひ分聞いてやる
影を濃く細く雪代岩魚かな
北窓を開けたる部屋の息づかひ
耕しの夕日の端を踏みて果つ
蓬摘み終へて一日のかがみ癖
雛飾る蔵の匂ひを座敷まで
しゃぼん玉影なきままに飛びにけり
山国は色を豊かに春まつり
鴨帰る兆しか昨夜のくぐみ鳴き
田上りの脚にからまる花の冷
滅び田に蝌蚪の陣しくのみの水
山藤の深入りしたる杉襖
春惜しむ轆轤に小壺練り上げて
力みたるところは縮み蛇の衣
石の向き違へて田水引きにけり
浮苗の根の白々と夕日中
蟇殖えて沼生臭くなりにけり
郭公や扇開きに千枚田