萩原まさこ

茶摘

見はるかす茶山萌葱に湧くごとし

みるき芽の息吹伝はる茶摘かな

初摘み茶先づは仏へひと掴み

針よりも尖る手揉みの献上茶

箔押しの箱に収まる初摘み茶

駿河路や新茶もてなす道の駅

村人の数より多き新茶旗

広重の小夜の中山茶摘どき

茶摘女へ雲払ひ聳つ富士の山

深むしの青き香に噎せ新茶揉む

夜もすがら茶を揉む音の窓明かり

耳馴れて製茶の音に寝落ちたり

大井川の風にちらちら茶摘笠

往く船を遠く小昼の茶摘衆

茶摘女の疲れに雨の一日かな

跡継ぎの無き茶畑の芽吹きたる

二番茶を刈るや海より日照雨来る

渋染みの手で酌み交はす焙炉上げ

刈り捨ての四番茶畝に散らばれり

刈り終へし茶山安けし風渡る