唐沢静男
お水送り
北前船寄航の浜に石蓴掻く
軒浅き小浜小路や蒸鰈
姫宮より彦宮に春遅れをり
雪解の薄き濁りを遠敷川
料峭や淵に呑まるる渦の数
春燈や格子にをどる行の影
大護摩を据ゑし結界下萌ゆる
結界を囲む人垣春の泥
松明の駆ける回廊冴返る
大護摩を荒焚く杜に春の月
閼伽井戸へ舞込む火の粉送水会
水送りの松明の列動き出す
火の粉浴びお水送りの列につく
火の帯の遠き流れや水送り
法螺の音にかさなる瀬音水送り
御香水そそぐ鵜の瀬や白椿
瀬にしみて祈りは奈良へ送水文
水送り済みし古道焦げ臭き
春めきて潮差しわたる若狭かな
魚は氷に上り照り合ふ三方五湖