ふるさとの鐘の音聴こゆ初電話
山脈の藍色深く春立てり
周平の本にすみれの栞かな
羽撃きに力ありけり巣立鳥
職退きし夫に六十本の薔薇
青梅雨や多層民家の濡れ羽色
端居して素顔の我に戻りけり
授かりし自然薯掘りの秘訣かな
あれこれと迷ふ指先菜を間引く
出羽富士へ呼応高らか白鳥来
咲き残る花も括りて雪囲
寒紅の黒髪にほふ羽黒巫女
じつとして居れぬ空なり雪卸す
黒松の傾ぐ荒磯や波の花
角巻に潮の香包む行商女