早起きの母の掛け声寒日和
海白く濁し鰰来たりけり
母の母そのまた母の木の芽和へ
尾道の港の見ゆる干鰈
僧堂の光る卯の花腐しかな
郭公がもう来てゐると妻が言ふ
朝鈴や膝まで濡るる牧の径
潮色の変れる迅さ箱眼鏡
かぶと虫闇を鳴らして来たりけり
広島の凪の静けさ原爆忌
鰡釣に河口の潮満ち来たる
つけ馬のやうな秋の蚊叩きけり
コスモスや紙飛行機は風に乗り
初時雨電車の窓をすべりけり
雨上る空の静けさ雪ばんば
菊地ひとしきくちひとし
菊地ひとしきくちひとし
◆略歴 朝日カルチャーセンターにて棚山波朗に師事。平成21年「春耕」入会。平成24年「春耕」同人。俳人協会会員。令和3年1月9日死去享年80歳。