羽ばたける鴨のしぶきの淑気かな
餅花の下に落語の切符売り
病む母の静かな寝息去年今年
波形の欄間の彫りの春埃
糸桜払子の動きとなりにけり
六千の兵の首塚麦青む
松ヶ枝に上り詰めたる雀瓜
鬼灯市鉢を掲げて呼びこめり
道塞ぐ土砂の大岩藤の花
秋澄むや衛士に敬礼返されて
どの筋も疎水の音や風の盆
ひとところ柚子の空あり雲巌寺
底冷や軋みのつづく長廊下
外輪の稜線とがる寒日和
引越の荷に加へたる古暦
真木朝実まきあさみ
真木朝実まきあさみ
◆略歴 昭和50年沢木欣一指導の職場句会に参加。のち「風」入会(終刊まで)。平成20年「春耕」入会。平成24年「春耕」同人。