神南備に日の差し初むる初景色
天神の梅のしづめる福茶かな
立春の菓子をこぼるる青きなこ
水辺にも寄りて野遊日和なり
ふくらます紙風船に薬の香
胡蝶花やだれかれとなく守る祠
殻を今抜けたる蟬の羽の色
根昆布のねばりを啜る大暑かな
向日葵や暮れ残りたる地のほてり
立秋のなかなかに濃き夕日差し
煮崩れぬやうに魚煮る厄日かな
釣瓶落し一樹に集く鳥の声
池普請鯉分け合うて終へにけり
松の葉と書きて届くる亥の子餅
つややかに豆の煮上がる小晦日
岡本明美おかもとあけみ
岡本明美おかもとあけみ
◆略歴 平成元年より独学、通信教育を経て平成8年「雲の峰」入会。平成9年「春耕」入会。平成10年 「雲の峰」同人。平成18年 俳人協会会員。平成22年 「春耕」同人。令和2年2月18日死去69歳。