曲るたび瀬音のかはる芽吹山
くちなはの生ぬるき風残したる
春の宵志功の天女浮かれ出づ
かぐや姫あらはれさうな竹を伐る
破芭蕉風に光を裏がへす
暮れぎはの色のあやふき返り花
遠足の声をつめ込むケーブルカー
結界を音なくこゆる蟻の列
トマト描くクレヨンの赤をれさうに
暮れ六つの余韻かさなる良夜かな
せせらぎの音のかがやく猫柳
けふ夏至の病窓朱く明けにけり
はたた神不夜城の街一喝す
燕去り武蔵野の空がらんどう
龍笛に雲の乱るる十三夜