若葉風女工哀史の峠道
鉋の刃叩きて戻す寒の晴れ
反り釘の先光りゐる実朝忌
軽鳧の子のこぼるるやうに水に入る
浸けられて砥石泡吐く残暑かな
竜田姫馬返しまで降りて来ぬ
しやぼん玉歪み正して離れけり
雨上がる雲のゆるびや合歓の花
金縷梅の開ききつたる縮れやう
山焼きの火の風生みて駆け上がる
羽ばたかぬ天使の翼春愁ひ
磯菜摘み崩れてよりの波早し
白鷺の一歩は水面踏むやうに
交番の地図の手擦れや小鳥来る
括られて子規庵の萩なほ乱る
沖山志朴おきやましぼく
沖山志朴おきやましぼく
◆略歴 昭和45年「曜変」入会、石田風太に師事。昭和46年「秋」入会 石原八束に師事。昭和51年「曜変」・「秋」退会。平成20年「春耕」入会。棚山波朗に師事。23年同人。同年春耕新人賞受賞、春耕創刊45周年記念賞(評論の部)受賞 俳人協会会員,令和元年春耕賞