のどけしや稲荷の口に小巻物
うろくづの生きて糶らるる花曇
長けたるは風に残して嫁菜摘む
暮れどきの風佐保姫の吐息かと
桜桃の百顆に百の雨雫
谷あれば村村あれば遅桜
あやふやな昼夜のあはひ河鹿笛
書痴ひとり虫養ひの椎を炒る
鈴虫や手熨斗で畳むややの物
色鳥の入りこぼれつぐ一樹かな
霜の通夜目で久闊を叙して並む
朝鵙のこゑの透きくる山晴忌
大凶を引くこんな夜は根深汁
おほげさに吹きて葛湯を冷ましやる
球蹴る子縄を回す子日脚伸ぶ
朝妻力あさつまりき
朝妻力あさつまりき
◆略歴 昭和52年「風」入会。澤木欣一、細見綾子、皆川盤水各師の指導を受くるも二年で挫折。 平成元年「春耕」入会。勤務先に俳句同好会組織。同好会誌発行。平成13年、同好会誌を「雲の峰」と改題、結社化し主宰。句集「晩稲田」「伊吹嶺」。俳人協会幹事、大阪俳句史研究会理事