のどけしや稲荷の口に小巻物
うろくづの生きて糶らるる花曇
長けたるは風に残して嫁菜摘む
暮れどきの風佐保姫の吐息かと
桜桃の百顆に百の雨雫
谷あれば村村あれば遅桜
あやふやな昼夜のあはひ河鹿笛
書痴ひとり虫養ひの椎を炒る
鈴虫や手熨斗で畳むややの物
色鳥の入りこぼれつぐ一樹かな
霜の通夜目で久闊を叙して並む
朝鵙のこゑの透きくる山晴忌
大凶を引くこんな夜は根深汁
おほげさに吹きて葛湯を冷ましやる
球蹴る子縄を回す子日脚伸ぶ