雁風呂の物語の浜烏賊を干し
海峡のかもめは鳴かぬ雪の果
地の果と言ふ村に棲む鳥曇
水温む木に結ふ沼の手漕ぎ舟
花うつぎ静まりかへる蜑の昼
髢草浄土と浮世つなぐ橋
蜥蜴出て目玉のすわる石の上
極楽も地獄も蟬の鳴く中に
燈台へ集まつて来る馬肥えて
末枯や下北どこも海で果て
岸に寄る骨ばかりなる送り舟
小鳥来る大観音の冠に
雁渡る下北半島首長し
小仏に重ねぎさせし岬鼻
馬が眼に雪張りつけて立ち眠る
畑中とほるはたなかとほる
畑中とほるはたなかとほる
◆略歴 昭和14年樺太生れ。中学二年、ぬかご久保田千湖に師事。後、加藤憲曠(薫風)、沢木欣一(風)皆川盤水(春耕)に師事。現在、棚山波朗主宰に師事。「蘆光」主宰。句集『下北半島』歌集『郁子抄』。盤水俳句鑑賞『盤水の風韻』など。