蕗を摘む雨も緑の信濃かな
六月の森水底を行くごとし
触るる間もなく木苺のこぼれけり
夏霧の山なぞりゆく速さかな
山国の日をこぼさじと女郎花
秋澄むや嶺の奥にも嶺つらね
日の匂ひする草染めの毛糸編む
霜の庭薔薇の棘より解け始む
湖の冷え鼻にあり薬喰
冬の雉子隠るるもののなき野面
銀河凍つ森に獣を眠らせて
訪ね来し人春燈の影の中
すぐ風に流るる花の種を蒔く
昼ふかき森に声張る孕鹿
御柱光となりて天穿つ