菜の花や鉄条網の内と外
春の夜の人影といふ脆きもの
白蝶に一枚の田の広さかな
土くれの不意に雲雀となりにけり
田植機の爪のはこびを見て飽かず
郭公の山高ければこゑ高く
飛石をとべぬかなしきなめくぢり
雨の日の煙おもたき蚊遣かな
うつくしく乱れ家路の祭髪
月下美人終生といふまたたく間
狂言師秋の扇をのみほせり
秋耕の石のぬくみを拾ひけり
後シテの鬼女あらはるる神の留守
感冒と書けば大患ひのやう
流れゐるやうで流れず鴨の陣
窪田 明くぼたあきら
窪田 明くぼたあきら
◆略歴 平成2年より主に通信教育で作句を行っていた。平成15年「春耕」入会。同19年同人、俳人協会会員。