冴返る家のどこかが軋みをり
待春や和菓子に彩を練り込めり
畦川に稚魚の群れゐる桜時
谷戸麦秋水の匂ひの風生る
梅干して生命線のきはだちぬ
鶏鳴の地を擦つてくる梅雨入かな
井戸水の旨しと蛍厨まで
すもも市莛を染めて売りつくす
夜店の灯指輪あやしく並びをり
ひよんの笛鳴らし古里置きざりに
秋燕定まつて来る山の丈
母ほどは鳴らぬほほづき母癒えよ
稲刈つて隙間だらけの甲斐の国
雨あとのみづうみに星雁渡る
冬蝗息ふきかけて逃がしやる
倉林美保くらばやしみほ
倉林美保くらばやしみほ
◆略歴 平成2年「風」多摩センター句会において棚山波朗に師事、後「風」に入会。平成14年「風」終刊、同年3月「春耕」に入会。平成16年「春耕」同人、平成17年「春耕」新人賞。俳人協会会員。