雛箱を抱へ軋ます蔵梯子
耕しの夕日の端を踏みて果つ
蓬摘み終へて一日のかがみ癖
田上りの脚にからまる花の冷
竹皮を脱ぎ百幹に加はれり
田明かりに蝙蝠放つ大伽藍
青飛驒といふ産土に吾子と立つ
夕涼を残し庭師の帰りけり
藁塚の座りよろしき傾ぎかな
姫君の着替への菊の届けらる
本閉ぢて後の夜長を楽しめり
水鳥の胸で押しゆく夕日かな
大津絵の鬼の迎へる初座敷
ひらがなのやうに風花ただよへり
鴨帰る兆しか昨夜のくぐみ鳴き
杉阪大和すぎさかやまと
杉阪大和すぎさかやまと
◆略歴 平成11年「春耕」入会。皆川盤水に師事。同13年 春耕同人。同18年春耕新人賞。同23年 春耕45周年記念大賞。同23年「銀漢」創刊同人。同24年春耕賞。句集『遠蛙』。俳人協会会員