正月の軒に乾きし海女の桶
初舞の足袋きしきしと床鳴らす
姿なき囀りこぼる黒木御所
潮騒に声奪はるる海苔搔女
朧夜の文弥太夫の声嗄るる
石屋根に石載せ菖蒲挿しにけり
休み海女半夏の豆を蒔きにけり
篝火を夜風が煽る薪能
威し銃村の夕陽を射止めけり
松手入れ軽くなりたる松の影
菊人形踊る裾より咲きのぼる
三寒の湯気上げてゐる飼葉桶
牡蠣割女もだを深めて山つくる
雪嶺へ糶待つ牛の高鳴けり
床下を北風吹きさらす能舞台
山城やえやましろやえ
山城やえやましろやえ
◆略歴 昭和45年白水会入会。昭和49年「風」入会。昭和62年「風」同人。平成3年「春耕」同人入会。平成4年佐渡市俳句講師。平成15年春耕賞。平成17年佐渡俳句協会会長、同顧問。令和6年7月退会