平成も終りに近い3月31日、八王子句会、南大沢句会、絹の道句会、高尾句会の合同吟行が春爛漫の中行われた。

 相模線原当麻駅に10時集合。徒歩6分ほどで、満開の大島桜に迎えられて「当麻東原公園」へ。馬塚とも言われる小高い地。春霞の相模野を見はるかすと豊かな気分になる。そこを下って、のどかな田園風景を楽しみ歩く。

 やがて、小さな社があり、一遍上人観進の三嶋神社と由緒にある。ここでは、浦島草に歓声があがる。野辺には、あけびが蕾も花もつけている。いよいよ無量光寺も近い。山門の手前では、上人ゆかりの大梛の木をしばしみんなで見上げた。階を登り、山門をくぐると上人像に引き寄せられる。諸国遊行の上人の姿は、このようであったろうと偲ぶ。境内の池の景を楽しみ、頭上の桜に見とれつつ、寺の門を出る。

一遍上人

 次は、句会場兼昼食会場ということで足に力が入る。はけからの湧き水に沿って田畑が広がる。遠く大山も見える。思わず、深呼吸をする。一時、ぱらついた雨も風情なりというところ。程なく、「飄禄玉」という野趣に富んだ会場へ到着。
 譲り合い、肩ふれ合っての食事も楽しく、美味であった。食後のコーヒーに癒され、句会開始。90句から5句選句するのも難しい。次々披講される句に感心するばかりだ。主宰選の天、地、人の句はさすがと思わせられる。吟行中も、度々、皆さんの朗らかな感動の声を耳にした。しっかり見て、感動し考えて句を作る姿勢に改めて感心し、教えられた。
 参加者の皆さんからは、植物、動物、地理、歴史などの知識をそれとなく教えていただき、ありがたく、楽しい吟行会であった。幹事の方々には、心から御礼を申し上げます。
「報告 伊藤克子」

咲き満ちて微動だにせず遅桜波朗

主宰選
《天》上人の黙の深さや花の冷えあきら
《地》諸葛菜寺のなだりを染め志朴《人》走り根のをどる山寺桜東風文男           浦島草糸絡み合ふ法の庭紀子
           鳥ごゑのゆたかな寺や桜冷え階子

◆互選句(あいうえお順)

彫り深き一遍像や花の冷えあきを
平成の結びの一日花万朶英子
浦島草竿投ぐる業競ふ原和世
ベンチ少し分けあひめでる桜かな和子
竹の秋さわさわ風をまとひ散る香代子
春の雨大樹に残る古刹かな京子
さへづりや前のめりなる一遍像 
引水の池の鯉はね水温む茂子
見てをりぬ椿一輪落つるまで高司
馬塚の大島桜真白なり 
花冷えの一遍上人まへ屈む利子
山門を額縁として花の寺延子
一遍像春の愁ひを湛へをり博江
木の芽だつ無量光寺の静寂かな 
花冷えの微かな香り手の平に正治
静寂の寺苑や石の亀鳴けりまさこ
杣畑の短き畝や豆の花美保
平成の終る今宵に花はまだ三智子
天を突く一遍の梛百千鳥美智子
茎立や当麻の里の日溜りに八起
囀の激しくなりし日射しかな洋子
花冷えの古墳めぐりの顔と顔ようこ