あきる野花祭り
オリエンテンプリング吟行記
毎年恒例となっている多摩地区有志による「あきる野花まつり」吟行会が本年度は規模を拡大し「かわせみ句会」「皆中句会」等の皆様を含め、棚山主宰のご参加を賜り、平成28年4月8日に行われた。
JR五日市線東秋留駅に集合、総勢42名の仲間が狭い駅前を占拠した。心配された前日の雨も上がり、多少雲があったものの快晴で上々の吟行日和であった。
本日の吟行地「東秋留」地区は奥多摩の入り口に位置し農業中心の村であった。昭和40年代以降開発され都市化が進んだが近郊農業も盛んで、武蔵野特有のの豊かな自然がまだ残っている。この地域には昔から多くの寺院が点在し、どれも山里の田園風景に溶け込み鄙びた感じのする寺である。30年前から「花まつり」の日には、近在の八寺を巡拝する「オリエンテンプリング」が行われ、花まつり参拝と花見を兼ねた近隣の人達の人気スポットでもある。
当日は時間の制約もあり駅周辺の四寺のみの吟行とした。各寺とも桜が満開で花見と花祭の吟行となった。特に「普門寺」と「地蔵院」の枝垂桜、「玉泉寺」の桜の古木が印象的であった。「西光寺」では信者が歌う御詠歌がが流れ花祭に情趣を添えていた。
寺と寺を繋ぐ道には、野鳥が囀り、野草が咲き乱れ豊富な句材に接し、多少汗ばみながら好天に恵まれた吟行会であった。(報告:小林博)
◆当日句より
参道にその名地獄の釜の蓋 波朗
人々の来てはぬかづく仏生会 園子
杓ごとに武蔵野の風甘茶仏 文男
み仏の匂ふがごとく五香水 階子
花の道一本貫く山野かな 瑞子
飛花落花瀬音谺す多摩の里 佐知子
どの寺も男衆仕切る花祭 妙子
灌仏の一杓ごとにかがよへり 實
寺々のかをり味はふ甘茶かな 忍
山里の空に昂るけやきの芽 利子
御詠歌の鈴の音そろふ花の寺 吉和
浦島草木下しめりにひげ伸ばす 敏江
寺ごとに祝ふ仏事や花御堂 怜子
生きものの声満つ野山仏生会 ひとし
にぎはひに目白飛びだす甘茶寺 あきを
堂前の風の甘さや仏生会 七代
散り際もほめられてゐる桜かな 令子
糸の先もつれてゐたる浦島草 美保
鳥声の木々を離れぬ甘茶寺 博
言祝ぎて子雀来てゐる寺の庭 美智恵
御詠歌の鈴ふる音も仏生会 千枝子
美しく地をよごしたる紅椿 利明
ねぎ坊主われもわれもと天をつく 和子
人絶えてふと灌仏の幼な顔 ふみ江
み仏は素足で立てり花まつり 澄子
あきる野の空へ欅の芽吹きかな 幾子 野の光密に盛りあげ花御堂 美智子
鶯の声に癒され寺巡る 久枝 踏むことをためらふ落花石畳 孝子
花よりも小さきかんばせ甘茶仏 里香 堂裏の春筍目覚む雨上り 和世
御詠歌の鄙ぶりやさし甘茶寺 八起 溝川の音なめらかに仏生会 通子
花祭野辺の地蔵も飾られる 香代子 一幅の絵として山門花の寺 知子
葺きあげて過不足のなき花御堂 瑛子 鐘楼に大樹の桜鎮もれり 純
総門を額縁として糸桜 朝実 寺を継ぐ僧侶の飾る花御堂 徹
艶やかに濡れし仏や花御堂 富彦 ひと杓で全身濡るる甘茶仏 美代子
野の花を誉めて巡れる甘茶寺 満